日本料理で使用されるだしを取ることができる、食品の種類とそれぞれの特徴を解説します。それぞれの食品には、旨味成分も異なり、だしを取るタイミングや温度も違います。その特徴も踏まえて解説します。
やっぱり外せない鰹節だし
だしの話題で外すことができないのが鰹節です。鰹節は、鰹を一本釣りで釣った後内臓を取りさばき乾燥したものです。乾燥の工程の違いで種類が変わり、更に、削り方で用途が大きく変わります。鰹節に含まれている、旨み成分のメインはイノシン酸です。イノシン酸は熱に強い性質を持っているので、沸騰していない程度のお湯でだしを取るのがベストです。
鰹節の中で大きく性質が変化するのは、乾燥の工程になります。そのまま乾燥させた物を荒節です。日本のスーパーで鰹節として販売されている約80%が荒節になります。ですが、料亭で食べる和食のだしに使用されている鰹節は、この荒節と異なります。本枯節と呼ばれる鰹節を使用しています。スーパーで本格的な味の商品を探したい場合は、鰹節削り節と表記されているものが本枯節になります。
だしの味の特徴は非常にまろやかな味わいであり、味の濃さを鰹節の量で調整することが簡単です。加えて、他のだしとの組み合わせでもベースに使用されることも多いだしです。
美味しいだしを取るポイントは、80℃ぐらいの少し冷ましたお湯で取ることと、だしの旨味が少ない時は鰹節の量を増やすことで調整することです。目安は、花かつおなら30秒~荒削りなら3分ほどで良いだしがとれます。注意点は、イノシン酸は沸騰すると旨味が飛ぶので、煮出しには不向きです。
削り節の厚さの変化によって、だしを取る時間が異なります。鰹節でも取れるだしの種類とそれぞれの特徴の用途としては、花節がお吸い物や豆腐にかけるといった用途、荒削りになるにつれてしっかりとしただしが必要な、めんつゆと言ったものに使用します。オススメなのは粉節でだしを取ったままで手軽に食べることができます。
深い味わい昆布だし
昆布は海藻の昆布を収穫し天日干しにしたものを、だしを取るために使用します。昆布の原産地は、羅臼、日高、利尻昆布です。北海道の冷たい海水と豊富な栄養分で成長した昆布は、太く大きく、旨味成分も非常に濃縮されているのが特徴です。
昆布のだしの旨味成分は鰹節と異なって、グルタミン酸が主成分です。昆布だしのとり方は、鰹節と異なり、冷たい水から徐々に熱を加えて煮出ししていくのが基本です。また、昆布の表面についている白い粉は旨味成分なので、こすりすぎないのが基本です。落としてしまうとせっかくの旨味成分が台無しになります。昆布だしも薄い場合は昆布の量をハサミでカットして追加して調整をします。
市販されている商品の場合は、昆布の中に入っている渋みの味が、高温だと抽出されてしまうので、ゆっくり加熱して出すのが基本です。しかし、だしを取る昆布でも、厚さが薄いものもしくは最高級品の場合は、ある程度の高温のお湯につけても良いだしがとれます。これは、昆布に入っている渋み成分が少ないためです。
昆布のだしは、幅広い和食に使用され、しっかりとした旨味が残ること、みりんとの相性も非常に良いので、五目ご飯と言ったものや熱によって風味が落ちないので、湯豆腐と言った料理にも使用されます。
煮物料理に抜群のあごだし
あごだしのあごとは、九州地方の方言で、トビウオのことを言います。あごだしとは、トビウオの内臓をとって炭火焼きにし、乾燥させたもので取っただしのことを言います。あごだしの特徴は、さっぱりとして、深みのある魚の味がするだしです。旨味成分は鰹節同様イノシン酸になります。しかし、あごだしは、他のミネラルやビタミンが豊富で、人間の血流を良くすると言われている、ビタミンEが豊富でだしの温かい状態で摂取することができるため、冷え性に効果的なんです。
あごだしの取り方ですが、実は、実際のトビウオは非常に大きいため、一般家庭では炭火で焼いて乾燥させた物は入手がしにくい、旨い出汁が取れないといった難点があります。もし、炭火乾燥した物を手にした場合は、内臓の箇所を取り除き、一晩冷水においてからの使用します。煮出しをすると内臓周辺のエグミ成分が出てしまうのと、だしが濁ってしまうので、あまり良くないためです。
簡単に量が調整できて、使用しやすいものを考えている場合は粉末になった商品も販売されています。粉末の商品の場合は、粉状なのでそのまま60℃ぐらいのお湯に入れて使用すれば良質のだしが取れます。
使用されている料理は、麺類のスープ、煮物やおでんです。さっぱりしているので、調味料で味付けをしてより美味しいスープや汁を作るのに向いているだしです。特におでん屋煮物にはあごだしが使われることが多く、合わせで使っても味の風味を深めてくれるだしです。
濃縮した魚の旨味いりこだし
いりこだしは煮干しを乾燥させた物を使って取るだしで一般家庭でもポピュラーなだしです。いりこだしの旨味成分はイノシン酸で、魚類のだしでおなじみの成分、ですが、いりこだしは他の魚系のだしでも気をつける点が2点あります。
最初に気をつける点は、産地や品質によってだしの旨味が非常に異なることです。市販されている商品のなかでもいりこだしのいりこは価格の幅も広く、様々な商品が販売されています。そのなかで、注意したいのは魚の大きさです。いりこの場合販売している魚の大きさがまちまちです。魚の大きさが、7cmぐらいの大きな物を買うのがポイントです。
小さい魚の場合はそのまま入れてだしを取りますが、内臓を取り除く手数がかかる、もしくは内臓を取りきることが出来ないので良質のだしを取ることが出来ないためです。
次に、必ず出汁を取る際には、内臓の部分を取りきることです。いりこだしが、昆布や鰹節程良いだしが取れないと嘆くのは、いりこの内臓の部分が残っていることで、内臓のエグミ成分が出るためです。また頭の部分も取り除き、裂いて骨が見える状態にします。こうすることで、冷水で抽出することで美味しいだしを取ることができるのです。
いりこだしに使われる料理は、味噌汁、めんつゆ、スープ類に多く使用されます。特に、塩が豊富に入っている、味付けの強い調味料との相性が良いのが特徴です。味噌との相性がとても良く、味噌汁のだしでの使用頻度が高いだしになります。
甘辛い味付けに抜群しいたけだし
しいたけを乾燥させると干し椎茸になりますが、このしいたけを冷水に戻した水を捨ててしまう方、それは非常に勿体無いことをしています。実は、しいたけを戻した水には、しいたけの旨味成分が溶け込んでおり、出汁として使用できます。
だしに、含まれている成分はグアニル酸で、昆布や魚類中心としただしとは違う旨味成分です。
だしのとり方は、へたを取った干し椎茸に冷水を入れて戻します。味を少し見て、濃い場合は水を足して使用します。みりん等で甘みを足すことでより風味の良いだしになります。
特に醤油との相性が良く、野菜との相性が良いので、煮物によく使用されるだしです。
旨味を加算・合わせだし
実は先程紹介しただしの種類で、旨味成分が異なる物を合わせることで、人間の舌はより多くの旨さを感じることができるようになります。鰹節と昆布の合わせは単純にその美味しさ同士が足されたものではなくて、それ以上の美味しさを感じることが出来ます。その知恵を利用したのが合わせだしです。販売されている合わせだしを利用するのも、自分で美味しい組み合わせを探すことで、料理の楽しみをより拡げることが出来ます。
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