日本はうま味研究の先進国
世界中の民族の中でも、日本人は非常に繊細な味覚と、うまみ成分に非常に敏感だといわれています。その証拠にうまみの元であるグルタミン酸ナトリウムを発見したのは、池田菊苗という学者です。元々人間の舌には、甘み、辛味、塩味、酸味、渋味を感じる味蕾細胞があります。人間のうま味自体を感じる事ができる味蕾があることも、2002年に発見されました。うまみの元成分の研究があってこそ、人間の美味しさを感じる仕組みが解明されたのです。
人間には、美味しさを感じるためだけのセンサーがあり、その美味しさを感じることが出来ます。人間の味覚は、育つ環境によって大きく変化します。日々食べている食べ物によって、味を感じるセンサーが変わるのです。
分かりやすい例として、人が食べている食事の塩加減が人によってしょっぱいか、そうでないかは人によって大きく変わります。日本人はその中でも普段の食事で、繊細な味加減を文化としているため、味のセンサーが鋭いのです。
特にだしを使った料理を中心に培っている日本人の文化は、その繊細な味加減を感じる土台がそなわっており、それを支えてきたのが、だしに含まれているうまみなのです。
日本料理と海外の料理のうま味の違いの秘密
日本料理と海外の料理にはうまみの部分で決定的な違い、日本料理にしかない特徴があります。それは、塩や脂が入っている素材を使用しなくても、料理を美味しくすることが出来るだしを使った料理文化が培われていることです。
海外の料理の場合は、脂や塩が入った調味料を使用していることが多いのが基本です。素材に肉を使用したり、塩を加えたりして味付けをする料理が一般的です。世界一美味しいといわれている、中華料理でさえ多くの塩分を使用します。しかし、日本料理で使用するだしには他の国が持っている調味料と決定的に違う特徴があります。それは、うまみ成分のみを加えることが出来るという点です。
もし、他の海外の国の料理の場合は、うまみを入れる場合には、脂や他の動物の食材を入れて調理することで、味のバランスを整えます。うまみだけを加えたいのに、脂や塩分といったほかの味覚を刺激する成分も入ってしまうのです。対して、日本食で使用するだしの場合は、うまみだけを加えることが出来ます。人間の味覚は、人間の健康を維持するために必要な成分を美味しいと感じます。その中でうまみはアミノ酸を主体としている成分なので、口で感じると他の味覚以上の満足感を得ることが出来きます。
また、だしはスープとしても飲むことが出来ます。そして、そのだしの素材に含まれているうまみ成分以外の有効成分も摂取することが出来ます。ビタミンEといったビタミン類、魚類に含まれているカルシウムを中心としたミネラルも簡単に摂取することが可能です。
うまみは味を打ち消さない
うまみの味付けが魅力的なのは、うまみがあっても素材自体の味が消えないということです。単純なことですが、うまみだけを足すことが出来るというのはそういった魅力があります。野菜炒めを作ったときを考えて見ましょう、ここで塩を入れて味付けをする場合は、入れすぎると、塩の味が口の中を支配して、炒め物に使用した野菜の味付けがまったくしません。しかし、うまみ成分が入っているだしで濃く味付けをした場合は、うまみが濃いなと思っても、元々あった野菜の味は消えないはずです。他の甘味や辛味の場合も、濃すぎれば素材の味が消えてしまいますが、うまみは消えることがありません。
うまみの味の特徴は、薄い量でも感じることができ、濃い場合でも素材の味を壊すことがありません。このうまみ成分だけを足すことが出来る調味料がだしなのです。だしの文化は世界で日本にしかない文化であり、うまみだけを調整できるというのは大きな魅力になるのです。
加えて、だしの場合は、素材のうまみも引き立てる効果も持っています。世界の料理の中で、日本料理だけが、シンプルな野菜の煮物で、なおかつ油脂が入っていなくても美味しさを感じることが出来る独自の文化を作りえたのです。
だしはうま味の最強調味料
だしが、うまみの最強調味料と断言できる理由は、抽出されたエキスがうまみの、グアニル酸やイノシン酸を中心とした有効成分のみだからです。分かりやすい例で言うと、鰹節の本枯れ節の場合は、さらに乾燥後カビによる発酵によって、そのうまみが更に増しているのです。また、削る大きさによって、だしの濃さや質に変化を与えることが出来ます。
加えて、いろんな種類のだしも、その濃さを容易に調整できるといった点が大きな魅力になります。だしの大きな魅力は、うまみ成分だけを料理に加えることが出来るだけではなくて、うまみの濃さの調整が非常に容易ということです。だしを取る際に分量に対して、多くのだしを取る材料を入れれば良いだけです。こうした、料理の味付けの容易さや、味付けの濃さによって個性を引き立てることが出来るのもうまみの特徴になります。
そして、最大の特徴といっても良いのがうまみ同士の加算が容易ということなのです。だしの大きな特徴は、他のだしとだしを組み合わせることで、うまみが増します。人間の舌は、多くのうまみ成分が同時にあることで、美味しさが数倍以上跳ね上がります。鰹節だしと昆布だしを組み合わせると美味しさが増すのはそれが理由です。もし、これが他の国の料理の場合は、野菜とかつおを組み合わせるということでしか実現ができません。日本料理の場合は、その味付けがだしで簡単に作り出すことが出来ます。
また、だしの組み合わせによっては、個性も出すことが容易です。どのだしを、どのような割合で混ぜるのか、自分好みでアレンジすることもできます。その中で、混合だしは日本人が美味しいとされるだしを組み合わせ、旨味や風味を増やすという先人の知恵が大いに詰まっているのです。
日本人のうま味はだしと調味料の調和
さらに、このうまみ成分のだしを加えるだけではなくて、調味料を加えることで、うまみをより引き立てています。日本料理では、味醂、醤油、味噌は塩が含まれており、加えて発酵食品です。発酵することで、調味料の味がより濃縮されているエキスや風味を引き出します。
だしは調味料の味自体も打ち消すことがありません。それぞれの調味料には風味や味の個性があります。調味料はバランスを意識してそれぞれ入れないと基本的に味付けに偏りが出てしまいます。例えば、味醂と醤油のバランスが2:1が一番という経験則はその部分から来ているのです。
だしの最大の特徴は、その調味料の味を消さないという性質があります。その為、調味料のうまさも引き立てることが可能なのです。調味料とのバランスを活かし、料理に対してうまみ成分を与えることが出来ます。
まとめ
日本人のうまみは、だしを中心とした料理から培ったものであり、素材や調味料の風味を損ねない特徴がある、世界でも類を見ない調味料です。だしの分量が濃すぎたことによって、味が損なうことが無く、うまみのみを増やすことが出来る類を見ない調味料です。また、さまざまなだしの組み合わせによって、風味やうまみを増やすことが出来るのも大きな特徴です。だしを基にして、様々な調味料を加えることで、作る料理の多様性を増やし、個性を増やすことも可能です。日本人のうまみとは、だしを中心とした、素材と調味料の調和が織り成す、繊細な味付けなのです。
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